美味しさの訳


カツオ節の場合は油分が少ないカツオほど高品質のカツオ節になるという話を聞いて、「それでは油分の抜けきったブナサケなら節に最適なのではないか」とのアイデアから鮭節の開発に取り組みました。
北海道初の鮭節製造施設の完成と最高の品質の鮭節を作ることに成功しました。

製品として鮭節が完成し、風味に関する様々な成分分析を行なってみたところ、鮭節は他の節にはない特長が多くあることがわかってきました。
鮭節には他の天然調味料と比較して風味に関連する遊離アミノ酸が2倍以上多く含まれているため、鮭節を口に入れた瞬間に「甘味」と「うま味」をグッと感じることができます。
一方で、鮭節は煮干しなどと比較してコクが少ないという結果がでています。これはいつまでも口の中に後味が残らないという結果であり、これが鮭節の「サッパリ感」につながっているのだと思います。
鮭節が日本料理やうどんの出し、卵や大豆製品によく合うという評価はこういった特長が活かされている結果だと思います。味覚センサー(右図)の結果からわかるように鮭節は他の魚介系の天然調味料とは
全く異なる位置に存在しており、利用頻度が増えるに従って、まだまだ多くの使い方が見い出されると思っています。

鮭節は風味に関する遊離アミノ酸が多く、他の天然調味料と比較して2倍~5倍も含まれている。例えば、うま味を感じるグルタミン酸やアスパラギン酸はカツオ節と比較して3倍以上多く、エビやホタテの甘味成分であるグリシンやアラニンなどのアミノ酸は2倍以上多く含まれている。一方、ロイシン、アルギニンなどの苦いアミノ酸も2倍以上多く含まれている。また、サケ科魚類にはアンセリンというジペプチドが多く含まれていることが知られており、風味やコクを強化するといわれている。アンセリンは鮭節ではカツオ節の8倍以上も含まれており、鮭節の風味の特長の1つになると思われる。遊離アミノ酸組成の結果をまとめると、鮭節はカツオ節と比較して甘味、うま味、苦味が強い特長が示されている。
食品加工研究センター
応用技術グループ 主査(プロセス開発)
阿部 茂
[経歴]
- 1990年
- 北海道大学水産学部卒業
- 1990年
- 月島食品工業(株)第一研究室
- 1994年
- 北海道立食品加工研究センター応用技術部食品工学科
- 1994年
- 北海道立十勝圏地域食品加工技術センター 研究開発課
- 1997年
- 北海道立食品加工研究センター 加工食品部畜産食品科
- 2004年
- 社会人博士後期課程 入学
- 2007年
- 北海道大学大学院水産科学研究科 生物資源化学講座 後期課程 (社会人大学院)修了
- 現在に至る
[表彰歴]
- 1999年
- 北海道知事表彰
- 2000年
- 日本食品科学工学会技術賞
- 2008年
- FOOMA アカデミックプラザAP賞地方独立行政法人 北海道立総合研究機構
